fukugyo
2025年8月17日

M1カルチャーその参(副業OK)

副業OK

ちょっと間があいてしまいましたが、文化の話の続き、です。

メタップスワンには、副業OKという文化があります。

「この制度があったから入社しました」という方もいらっしゃいます。
実際、副業をしているメンバーは徐々に増えています。

そもそも、なぜ副業OKにしているのか?

主な理由は以下です。

1.メンバーの成長
会社の他メンバーの苦労がわかる(売上を立てる営業の苦労、仕事をまわす人の苦労、管理部門の苦労等)。
会社以外のグループとの付き合いやネットワークが増えて成長につながる。
社会が見えてくる。
結果的に本業にもプラスになる(かもしれない)。

2.メンバーの金銭的な足し
複数のポケットを持つことで懐が潤い、生活にもプラスになる。
結果的に本業でもゆとりを持つことができてプラスになる(かもしれない)。

3.会社としてのメリット
会社の文化として差別化になっている。
結果、人材採用にもプラスになる。

 

副業?兼業?複業?

副業とは、本業(主たる職業)以外に収入を得る仕事のことです。

広い意味では、アルバイトや投資なども含むという定義をしているケースもあるようです。
アルバイトは副業だというのが通常でしょうが、投資については判断は難しいです。
一般的な会社では、株式投資や不動産投資をするだけならば副業申請は不要なところが多いと思います。
もっとも、それらを極めようとすると事業になっていくので、線引は難しいです。

副業には、大きく分けて「雇われる副業(アルバイト型)」と「自分で稼ぐ副業(個人事業型)」の2パターンがあるとされています。

個人事業型の副業のほうが税金面で有利です。
なぜかという理由を記載しようとすると膨大になるので割愛しますが、例えば青色申告をすることのメリットは小さくはないです。

余談ですが、代表個人の思いとしては、副業をするのであれば、個人事業型を推奨しています。
売上を立ててみて、確定申告書類を作成して、税金を納めるという一連の活動だけでも社会的な学びが大きいことを実感できるはずです。
雇い主は自分であるため、時間のやりくりもしやすく、取り組みやすいと思われます。
アルバイト型は、NGではありませんが、あまり推奨していません(理由は後述します)。

 

兼業という言葉もあります。
兼業は、ある職業に本業として従事しながら別の職業も兼ねることです。
会社員が農業も営む「兼業農家」が代表例です。

似て非なるものとして、複業という言葉もあります。
複数の仕事を同時に持ち、すべてを本業として同時並行的に成り立たせているケースがこれに該当します。
妙に、副業よりもポジティブな響きがありますよね。

副業の収入が本業同等か本業よりも多くなった場合、もはや複業のほうが正しい言葉になるのかもしれません。

 

副業の歴史

副業にせよ兼業にせよ複業にせよ、本業優先に比べると、ややネガティブなイメージがあると思うのは私だけでしょうか。

特に公務員では全面禁止という規則があり、どうも雰囲気的に「本業をおろそかにする」というイメージがつきまといがちです。

そんな中、先日、興味深い記事がありました。

総務省、公務員兼業 後押し

そもそも、公務員法ができたころは市町村の職員の多くは自営も含めて何らかの事業に携わっていた。
本業に従事しながら役場の職員も務めるというのが実態に近かったのだろう。
その後、各地の人口が増えるにつれて官と民の仕事は明確に区別されるようになったのだ。

公務員も、昔は兼業がメインだったんですね。

人類は、長い間、狩りをしたり農業をしたり道具をつくったりと、兼業的な仕事スタイルがメインでした。
古代文明の発展とともに、国や王に仕える官僚のように雇われて仕事をする人が増えました。
しかし、こういった専任従事者はまだまだ一部だったようです。

産業革命後、欧米では工場に雇われる専任従事者が急増しました。
日本でも明治以降の近代化とともに同様の流れが始まり、サラリーマンという和製英語が生まれたりしています。

高度成長期にはホワイトカラーが増加し、バブル期のCMでおなじみの「24時間戦えますか」のようなモーレツな働き方が美徳化されるような時代もありました。

この頃は本業に専念することが当たり前で、副業兼業は亜流扱い、もしくはそもそも物理的に実行が難しい時代でした。

21世紀に入り、コロナ禍が働き方を大きく変えました。
オフィスに週5日出社するという常識が覆り、リモートワークができる時代になりました。

そうった働き方の変化と平行するように、副業を認める会社も増加しつつあります。
現代は、本業専任にせよ副業兼業複業にせよ、個人個人の事情で様々な働き方の選択肢が取れる時代になりつつあります。

 

20代、30代の働き方

代表の個人的な意見としては、大多数の人は20代(あるいは仕事をはじめてから1万時間以内の人)は本業に集中するのが良いと思います。

本業集中により、一定のスキル、マナー、自己管理などビジネスパーソンとしての基礎的な筋肉をつける時間があると良いという考えが根底にあります。
基礎的な筋肉がつく前にあちらこちら副業をしてしまうと、おそらくすべてが中途半端になる可能性が高いと思うためです。

もっとも、起業家的な素質がある方はそんな時間は不要だと思います。
そういう方は、石の上のも3年なんて言葉は無視して、とっとと世界を変えるためにチャレンジしたほうが良いと思います。

ですが、大多数の人はそういう起業家ではありません。
大多数の人は、20代(あるいは1万時間以内の人)は基礎的な筋肉をつけるために本業に集中して足場固めをすることが大事だという主張です。

20代の頃には、チマチマと株式市場で小銭を稼ぐために膨大な時間を費やしたり分散投資するよりも、自分自身に集中投資することが最もレバレッジが効く活動だろうと考えています。

20代前半に決めた道を、30代以降の人生でもそのまま進みたいと心底思える人はラッキーな方です。
ぜひ、そのまま突き進むと良いと思います。

イチローや大谷のように幼少期から野球一筋という人は、この議論自体、意味がありません。
しかしそんな人は、世の中でも稀ではないでしょうか。
ここで記載しているのは、そういった特殊な人ではない、大多数の人についてフォーカスしています。

30歳代の人(本業に1万時間程度集中した人)は、いつでも副業にチャレンジしても良いと思います。
チャレンジして、そちらが自分にあっていると思ったりしたら、道を変えたっていいと思います。
自分にあわなくても、本業の支えがあるので、いつだってやめることができます。

こういうことを書くと誤解されやすいのですが、本業専念がダメなんてことは、全くありません。
本業に集中して出世して年収を高めていくことこそがキャリア形成で一番良いという意見には概ね賛成です。

特に高収入の外資系金融マンなどは本業に集中したほうが良いと感じます。
ただでさえ忙しいので副業する時間なんてないという事情もありますが、副業ではなかなか得られないスケールの大きな取引に従事できて、莫大な報酬・インセンティブを得たりすることができてしまいますので。

そうではない会社でも、本業に専念してポジションや給与を高めていくことは、手堅い手段ですし、そこでしか見えない世界もあります。
大企業の社長になりたかったら、下手な副業をするよりも本業に全精力を傾けていくほうが近道でしょう。

副業の選択をミスすると、本業も副業も中途半端になり、愚者の選択に陥るケースもあります。
副業を安易に選ぶことはかえって危険になることもあります。

そういったことまで理解して副業を選択するのでしたら、良いと思います。

 

運用上の注意点とは?

さて、副業をやるとなったら、どんな副業をやってもいいのか?

もちろん、そんなはずはありません。
最低限の運用上の注意点を守っていただくことが大前提です。
以下、オカタイ内容ですので大半の方は興味がないと思いますが、社内にアナウンスした内容をブログ向けにまとめ直してみました。

副業をしたいと思ったら、副業申請書を提出します。
会社から認められれば許可されます。

申請書にはいくつかの守るべき誓約事項が記載されており、経営陣で承諾することが必須となります。
万一があってはいけませんので、ここは「大人の判断」ではなく、「会社の判断」を優先してもらうようにしています。

1.守秘義務

当社の取引先の機密漏洩につながることは一切厳禁です。
当たり前だと思われるかもしれませんが、運用上、判断が難しいケースがあります。
副業内容によっては、当社で培ったスキルやノウハウを活用するケースがあるためです。
その際、どこまで出して良いか?
どこからがダメか?
個別判断ですが、原則として、「取引先が、当社のメンバーの副業内容を知ったとして、問題になるか?」という問いをかけて判断するようにしています。

2.競業避止

一般的には、「企業の利益保護を目的としており、競合する会社に転職したり、自ら競合する会社を設立したりする行為を禁止する義務」のことです。
退職時にはおなじみの項目ですが、副業でも遵守いただいています。
判断基準となる原則は、当社のビジネスに悪影響を及ぼす可能性があるかどうか、です。
これも、明確にOKだったりNGだったりするケースもあれば判断に悩むケースもあるので、個別判断としています。

3.公私混同

文字通り、公私混同はNGです。
原則、「会社の資産を使って個人の資産に移転するようなことをしていないか?」という問いをかけると判断がしやすいです。

自分では公私混同ではないと思っても、周囲から公私混同と疑われることがあったりします。
例えば、当社のようにIT業界にいる場合は、取引先の株式はもちろん、広い意味でIT業界や広告会社の上場企業の株式を買わないほうがベターかもしれません。
インサイダー取引だと疑われるリスクがゼロではないためです。

余談ですが、私自身、苦い思い出があります。
時効だと思いますので、昔話を綴ります。

数年前、ある取引先の方から「会社でトークンを発行したいと考えています。興味ありますか?」みたいな話を受けました。
会食という場のノリもあり、「いいですね、もちろん興味あります!発行されたらぜひ教えてください!」といった回答をしました。

当時はブロックチェーンやトークン業界が大いに盛り上がっていました。
当社のグループ会社でも、時間を売買できるようなサービスやトークンビジネスの展開をしていた時期です。

私自身もトークンを使った新規事業を考えていた時期でもありました。
ビットコインやイーサリアムを買うのはもちろん、ユーザーとしてあらゆるサービスのトークンを買っては触れるようにしていました。
今思えば眉唾なサービスのトークンも買って損したこともしばしばです。
勉強代だと思っていたので損得は二の次でした。

そんなある日、グループ会社の人事から呼び出しがありました。
「業務上で知り得たことで公私混同して儲けようとしているという通報があったが、本当か?」と調査を受けました。

これには心底びっくりしました。
上記のとおり正直に回答して事なきを得ましたが、自分が意図せずとも周囲から公私混同を疑われることがあるものだということを肌で学んだ出来事でした。
ちなみに、この件の後、仮想通貨は一切買わなくなりました。

4.本業優先

副業は、本業あってこそ、です。
本業に支障をきたすような副業の働き方は良くないです。

本業に支障がないかどうかを計測することはなかなか難しいです。
当社では、周囲からの声や評判を判断基準として推し量っています。
具体的には、一緒に働いている周囲のメンバーからのフィードバックによって、その人が本業に支障をきたしているかどうかを判断しています。

大事なことは、周囲の判断であるということです。
本人の判断ではありません。

例えば、誰々さんが平日の日中に全然連絡が取れない、といった声があがってきたとします。
1〜2時間くらいなら普通にありえますが、半日とか1日くらい連絡が取れなかったり返信がなかったりすると、相談した人はどういう心境になるか。

よほど忙しいのか、サボっているのか、そして、もしかすると副業で忙しいのかと周囲から訝しがられたりすることがあります。
実際、そういった報告があがってきたことがあります。

いずれにせよ、本業に集中している人が損だと感じるような社風にはしたくありません。
副業OKという文化を継続しつつも、この点だけは特に強調したいポイントです。
業務時間外で副業している分には問題は発生しにくいです。

問題は、本業と副業の時間が被るケースです。

当社のコアタイムにおける副業は原則NGです。
しかし、実務上、そうもいかないケースがいくつか存在します。

例えば、確定申告。
必要な書類を役所に提出する作業は平日しかできません。

兼業農家で、金融機関からお金を借りている場合も、平日しか銀行対応できないなどの事情はあるでしょう。
その他、相手が平日の限られた時間しか対応していない場合、どうしても本業と副業の時間が被るケースが発生します。

これは会社の方針としてコンセンサスを得ているわけでないのですが、こういう場合、本業の合間に処理しても問題はない、と考えています。

もっとも、やるべきことをきちんとやって、周囲に迷惑をかけないということが大前提です。
本業優先という単語の中には、本業の他のメンバーに迷惑をかけずにパフォーマンスを出せるように仕事するのが、プロフェッショナルかつ大人の働き方だと考えています。

ここでいう「プロフェッショナル」とはなにか。
人によって回答は様々でしょうが、当社では「周囲からの期待以上のパフォーマンスを出すこと」だと定義しています。

周囲から、「あの人は副業によって本業に支障をきたしている」と判断されたら、当然ながら評価は上がりません。
結果、給与やポジションも上がりにくくなります。
副業によって、本末転倒にならないようにしたいですね。

ちなみに、大多数の方は本業も副業も上手に両立しています。
ですので過剰に心配する必要はありません。
しかし、本業に支障が出た実例もあったため、あえて例示しました。

5.健康維持

当たり前ですが、副業をやりすぎて体を壊したら元も子もありません。

体力がある20代のうちは土日も平日の夜もフルに使って副業できてしまうかもしれません。
しかし、30代、40代と年齢を重ねるうちに体力も衰え、同じように働いていると心身を壊してしまう可能性が高まります。

「雇われる副業(アルバイト型)」のように、時給で稼ぐような副業をすると、この罠に陥ることが多いかもしれません。

例として、「土日、コンビニで12時間働きたい」といったような副業申請があったとします。
将来コンビニエンスストアの経営をしたいので現場で1ヶ月程度学んでみたいといった目的・理由だったら、個人的にはOKします。

しかし、単に小銭稼ぎでコンビニで働きたいという目的だった場合、形式的にはOKするかもしれませんが、気持ちはNGに近いです。
人生の時間を切り売りして貨幣に変えるだけのような副業は、成長につながるどころか健康維持の妨げになると考えているためです。

この感覚は、ニュアンスが難しいです。
ゆえに個別に相談いただいて判断しています。

なお、これまで副業申請で一度もNGを出したことはないのですが、副業というのは、一度始めるとその後にどんどん加速していく傾向があります。
申請時点でOKだったから今後何をやっても良い、ということでもありません。

もともとは代表の個人的な思いとして「副業推奨」という単語を使っていましたが、『推奨という単語はいかがなものか。副業をやったほうが会社から評価されるという印象を与えるし、本業に専念している人が割りを食う印象もある。「副業OK」という言葉に変えたほうが良いのではないか』という声があがってきました。

それもごもっともだということで、昨今は「副業推奨」ではなく「副業OK」という言葉に修正しつつ運用しています。

 

以上、かなり長くなりましたが、「副業OK」という文化ひとつとっても、様々な観点でメリットデメリットがあり、悩みながら意思決定を続けている、ということが少しでも伝われば本望です。

この判断基準も、時代や環境の変化にあわせて変動していくはずです。

 

毎度のことですが、現状がベストだなんて思ってはいません。
これからも、試行錯誤の日々です。

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