M1カルチャーその弐(ハイブリッドワーク)
現在、メタップスワンは、ハイブリッドワークを採用しています。
出社とテレワークのハイブリッド勤務、です。
アフターコロナの現代では、よくある働き方の1つですよね。
とはいえ、常に試行錯誤の連続です。
ときどき聞かれる以下の質問には、明確なフィードバックがあります。
「週5日出社になる可能性はありますか」
「週0日出社に戻る可能性はありますか」
少なくとも私が代表者であり、かつ2027年末くらいまでは、週5日になる可能性はほぼ0%、週0日に戻る可能性もほぼ0%です。
※コロナ禍級の災害が再来したら話は変わりますが。
以下、メタップスワンの働き方の変遷を記しておきます。
※世の中に対する主張はありません。
単なる、社内の悪戦苦闘の記録です。
2019年(週5日出社+Work at Home制度)
メタップスワンは、2019年、3社が合併して社名変更してできた会社です。
世間のすべての会社と同じく週5日出社でした。
もっとも、母体の1つであるビカム株式会社では、エンジニア職のみ週に1日自宅で勤務しても良いですよという「Work at Home」という制度がありました。
2019年当時、周囲の会社でこういった在宅勤務制度を採用している会社は稀でした。
グループ会社の方からは、「甘い」「ゆるい」と散々言われました。
しかし当社に応募いただくエンジニアの方に聞くと、この制度は大きなメリットだし働きやすいという声が多数ありましたし、連絡もきちんと取れるなど、特段大きな弊害はありませんでした。
制度を廃止しませんでした。
今となっては「え?週1日の自宅勤務制度って、エンジニアですら週4日も出社する必要があるのですか?」と真逆の反応になりますね(笑)。
たった数年でパラダイムがひっくり返って、びっくりです。
さて、Work at Home制度に弊害はないと書きましたが、本当は、ありました。
エンジニア以外には適用されていなかったため、セールスなど他職種のメンバーからは「私達にも適用してほしい」という声があがっていました。
どうしたものかと思っていたときに、コロナ禍というパンデミックが発生しました。
2020年頃(フルリモートワーク)
2020年4月、緊急事態宣言が発動されました。
世間の大半の会社同様、当社もフルリモートワークに変わりました。
初期はzoomがあれば出社しなくても仕事できるね、という雰囲気がありました。
緊急事態宣言が解けた6月頃、あるクライアントの案件が失注するかもしれないという課題があり、久しぶりにチームメンバーが集まって議論しました。
私も同席したのですが、異変を感じました。
妙に、チームメンバー間の会話がギスギスしていたのです。
このとき、リモートワーク・テレワークというものは、普段からの信頼関係があってこそワークするものだと感じました。
信頼関係がなかったらそもそもワークしません。
さらに、それまでは信頼関係があったとしても、雑談もなく黙々と仕事しているうちに徐々に信頼関係の残高が減ることもある、みたいなこともわかったりしました。
オンラインだけではチームワークが必要な仕事は成り立たない。
定期的にオフラインで、顔合わせして対話する必要がある。
そう、はっきり理解できた瞬間でした。
ということで、マスクをしながらでも、ときには集まらないとダメだよね、という空気が醸成されていきました。
2021〜2023年頃(フルリモートワーク+週1日出社推奨+スポット集合)
2021年7月、港区にあるだだっ広いオフィスから渋谷のスクランブルスクエアに移転しました。
リモートワークが前提となったため、席数は大幅に減りました。
この頃は、感染拡大と収束を繰り返していました。
GAFAが週3日出社などのオフィス回帰にする一方、LINEヤフーはフルリモートにしたりと、様々な企業で働き方の違いが出ていました。
メタップスワンにおいては、週1日くらいは出社して集まるといいよね、というのがマネジメントレイヤーのムードでした。
週1日出社といっても、あくまでも推奨レベルです。
なぜ水曜日かというと、当社では原則オフラインの経営会議がある曜日だからです。
マネジメントレイヤーが、どうせ出社するならばこの日にまとめて対面して話すと効率的だよねということで、水曜日出社の文化が徐々に醸成されました。
さらに、最低でも半期に1回くらいは全員でスポットで集まって対話したほうがいいよね、という空気も出てきました。
東京圏以外にいるメンバーも含めて全員、半期に一度は東京で集まる文化ができました。
この頃は沖縄メンバーも増えていましたし、東京圏から新潟に移り住むメンバーもいたりしました。
どこでもドアができたような感覚でした。
なお、週1日出社というのは、週1日以上出社してはいけない、というわけではありません。
必要だと思ったら週2日でも週5日でも出社可能です。
採用の最終面接ではオフラインの対面を義務としているため、採用担当メンバーは水曜日以外でも渋谷に集まります。
面接が終わった後、特にテーマもなく、16時からビールを飲みながらいろんなことを話したりしました。
マネジメントの課題が発見できたり関係が潤滑になってその後の仕事がスムーズになったり。
新しくメンバーが入った際、引き継ぎや指導をするメンバーは、オンボーディング期間の1ヶ月程度は、週4〜5日程度出社し、オフィスの隣同士の席で仕事したりすることも多くなりました。
こういう働き方は強制してできているものではありません。
メンバーが必要だと感じたら、自発的にそうしているようです。
前回、メタップスワンは大人の会社を目指している、ということを記載しました。
「新しい人が入ったので必要性はわかりますが、週4回出社なんて嫌です。ムリです。」みたいな声が出て問題になったことは、幸いながら一度も耳に入っていません。
※心の中ではそう思った人も多いかもしれません。でも、期間限定ですし、引き継ぐメリットも感じていらっしゃるからこそかもしれません。
こんな感じで、フルリモート可能+週1日勤務推奨+必要になったら集まる、という文化が醸成されました。
相変わらず曖昧な文化ですが、いつものことながら大人の判断で進めています。
2023年、ビジネスで大きめのインシデントが発生しました。
あちらこちらでチームメンバーや役員と対話が増えた頃でした。
トラブル対応も、オフラインで対話すると良いと感じました。
2024年頃(ハイブリッドワーク+スポット集合)
週1日出社の文化がおおむね定着してきました。
全体会議や半期会を渋谷のオフィスで開催するなど、対話の機会も増えました。
ランチ手当の拡充、チーム飲みの推奨など、対話支援の制度も増えました。
2024年12月、東京圏のメンバー限定で、職種を問わず週2日出社のハイブリッド文化にしてみました。
目的は、競争力の向上、です。
この頃は、業績がやや厳しい時期でした。
高収益高収入な会社を取り戻すための「手段」として考え抜いて出てきた結論が、これでした。
週5日とはいいませんが、週2日くらいは、皆が出社して顔をあわせたほうが良いのではないかと。
2024年は、2023年のインシデント後の業績悪化を受けて、事業部の売却などダイナミックな経営意思決定や構造改革をしました。
上半期は、なんとか予算を達成することができましたが、下半期は一転して厳しくなりました。
2023年の業績悪化は理由がはっきりしていたものの、2024年頃に問題だと感じたのは、大きなトラブルがないのに業績が厳しくなっていたということです。
広告市場全体が伸び悩んでいる中、競合会社も必死に仕事している。
相対的にパフォーマンス競争に負けつつあるんじゃないか?
スピード感も落ちているんじゃないか?
その原因は、コミュニケーション不足にあるのではないか?
コミュニケーション頻度が少なくなった結果、意思決定が週1回のミーティングの場でしか行われず、タスク消化のスピードが遅くなり、気がつくとどんどんタスクが増えたまま経営スピードが落ちているのではないか?
特に若い方においては出社や対面コミュニケーションを増やしたほうが良いと断定できるようになりました。
「ちょっといいですか?」
「すみません、今更ですが、聞いていいですか?」
「すみません、ご依頼いただいたこのタスク、正直よくわかっていないのですり合わせさせてくれませんか?」
みたいな些細なことも、いちいちオンラインで会議するほどのことでもないため、細かい疑問が解消されずに進んでいたことがわかったためです。
テキストコミュニケーションの課題もしばしば感じることがありました。
テキストでやりとりしていると、ときどきニュアンスが伝わりづらかったりします。
たとえば、ちょっとばかり議論が発生した直後、片方が腹落ちしていなかったとします。
いつもは「よろしくお願いします!」ってびっくりマークで返信してくる人が、「よろしくお願いいたします。」になったりすると、あれ、なんか急に慇懃無礼になってない?さっきの言い方、まずかったかな?と、
送ったほうは特段普通に送ったのに、受け手からすると言い方がきつく感じたりして、傷つけてしまったり。
嫌われているんじゃないか、と疑心暗鬼になったり。
Slackやチャットワークは、普段の仕事では効率的なツールですし、当社としても利用を推奨しています。
しかし、込み入った話になると、非効率になったりします。
送られた内容にちょっとイラっとして、返信しようとして延々に書いていると、気がつくと30分とか1時間とか2時間とかかかってしまった、とか。
長文を送ったら、相手から軽くドン引きされた、とか。
Slackやチャットワークだとぎくしゃくしても、対面だと一瞬でさくっと伝わって終わったりしました。
特に評価面談や1 on 1 MTGなどは、Slackやチャットワークといったテキストコミュニケーションツールは危険になることがあります。
zoomやmeetのようなコミュニケーションツールでも、空気感やニュアンスが伝わらなかったりします。
こういうケースでは、対面で話したほうが、感情も伝わり、誤解も生まれにくくなって良いと感じます。
とあるブログを読みました。
引用します。
…何よりリモートワークによって、「思い出」が無い組織が出来上がってしまっていました。
成果を出した喜びや、うまくいかなかった悔しさ、頑張ったこと、出来るようになったことなど、何も皆で分かち合う時間がありませんでした。
会社のメンバーとコミュニケーション量が少なくて個人に目が向くメンバーも多く、カルチャーの強い組織を作っていたつもりが帰属意識の低い組織になっていました。
みんなが働きやすい組織を作ることが最高の会社を作ることだと考えて動いた結果が、真逆の組織を作ってしまっていました。
これは当社も同じだ、と思いました。
帰属意識が薄れているかもしれないなぁと。
そして、戦友同士で得られるような思い出がなくなっているなぁと。
「正直、もっと飲みたいんですよねー」
とコミュニケーションを渇望しているメンバーもちらほらといました。
当時、メタップスワンに足りていないのは、一体感の欠如とか、そういう根本的な文化にあるのではないかと感じました。
すべてではありませんが、大きな要素の1つだと感じました。
こういった背景から、総合的に判断して、えいやと「12月から週2日出社」にしました。
いきなり週2日にすると害が出るだろうなと思っていました。
でも、まずは、やってみて、その結果を踏まえて柔軟に変えればいいや、と。
2025年頃(週1日出社+ハイブリッドワーク+スポット集合)
2024年12月に実施した週2日出社ですが、1月から、週1日出社に修正しました。
たったの1ヶ月で軌道修正です(苦笑)。
いくつか理由がありますが、
「週2日出社したのに、話したかったメンバーが出社していなくて、誰とも話さずに帰宅することもありました」
「その日は通勤時間がもったいないと感じました」
といった声があり、確かにごもっとも、と修正の必要性を感じたためです。
毎週水曜日はほとんどの人が出社しているため、出社の目的が機能しているようでした。
しかし、その他の曜日は誰がいつ出社するかわからないため、オフィスに来る効用が減るのは自明でした。
この経験を踏まえると、将来、週2日出社にするならば、毎週水曜日に加えて、どこかの曜日を固定した上で追加すると良さそうです。
もっとも、まだそこまでする必要はないだろうと感じていますし、2025年8月からwework内でオフィスのフロアが変わることになったため、他のグループ各社とのバランス調整の結果、メタップスワンは原則週1日+αの席を確保し、働き方もこれまで通りにする、という方針が決まりました。
今後しばらくは週1日出社+ハイブリッドワーク+スポット集合という働き方を続けることになります。
少なくとも、あと2年くらいは変わらないでしょう。
当然、週2日でも5日でも、必要な方は出社しても構いません。
リモートワークにおいて、働いているかどうかを監視するようなシステムがあるようです。
モニタの前にいる必要があるシステムとか、マウスが動いたら働いていると判断するみたいなシステムとか。
もちろん、当社では、1mmも必要性を感じません。
メンバーとランチしたり、取引先に訪問するのも立派な仕事時間の使い方です。
逆に、PCの目の前にいたからといって、仕事しているとも限りません。
むしろ、仕事をサボるのではなく、自宅でエンドレスに働いてしまったり、公私の境がなくなってメンタルに負担が来るというケースのほうが問題になりました。
深夜はなるべく連絡を控えようとか、連絡するにしても「遅い時間に申し訳ありません」とひとこと添えようとか。
やっぱり、大人の判断でいこうよ、と結論つけています。
「在宅ワーク」と呼ぶのも、ちょっと違うかもしれません。
「テレワーク」「リモートワーク」のほうが適している気がします。
移動中の合間にカフェで仕事しようとか、温泉旅行の合間だけどちょっとだけ仕事しようとか、それで良いという人は良いと思います。
ちなみにですが、私自身、幼い子どもが2人いて、妻もバリバリ働いて頻繁に出社しています。
学校の送り迎えの負担は、結構大変です。
夕方のお迎え担当の日は、帰宅後のちょっとした時間に仕事を処理して、また迎えに行ったりということが多々あります。
移動中は、スマホでも連絡したり決裁したりしています。
働き方は職種なり立場なり環境なりで変わります。
正解はないかなと。
代表者ですが、個人的にも、こんな働き方をさせてもらっている今の環境に感謝しています。
コロナ禍は災害でしたが、コロナが生み出したテレワーク文化にも感謝しかありません。
おかげで、育児と仕事と両立できているわけですから。
昭和はおろか、平成でもこんな働き方をする日が来るとは、考えられませんでしたよね。
冒頭にも記載しましたが、世の中に対する主張はありません。
メタップスワンという会社では、現在、上記の流れでハイブリッドワークになっていますが、意思をもってフルリモートにしたり週5日出社にしている会社も、それぞれの考えで決めているわけですので、どの選択もそれぞれで良いと思います。
そもそも現場や対面でなければできない仕事は週5日出社以外の選択肢もないですしね。
置かれた環境ごとに違うのが当たり前で、どんな働き方が正しいとか正しくないとかを論じる気は全くありません。
今後も、環境は変化してくと思います。
変化に柔軟に適応したいと思います。
いつも、大人の判断で。